デスクワークが静かに体を蝕む理由

姿勢

― 座りすぎを防ぐ環境のつくり方 ―

前回の記事では、椅子の高さや選び方について書きました。
椅子の高さで、姿勢はほぼ決まる

環境を整えることで、姿勢はかなり変わります。

ただ、いくら良い椅子を選び、高さを調整しても、避けられない問題があります。

それは、座っている時間そのものです。

“Sitting is the new smoking”
(「座りっぱなしは、喫煙と同じぐらい体に悪い」といった意味で使われる表現です※)

このフレーズをどこかで見聞きしたことがある人もいるかもしれません。

私が初めてこの言葉をネットの記事で目にしたときの感想は
「いやいや、さすがに大げさでは……」
というものでした。

なぜなら日本人は残業が多いと言われ、一日の大半をデスクワークで過ごしている人も少なくないにもかかわらず、それでもなお日本は世界有数の長寿国だからです。

本当にそれほど体に悪いのであれば、もっと早く体を壊す人が増えていてもおかしくないと、当時は考えていました。

ところが、その認識を揺さぶる出来事がありました。

以前同じ職場で働いていた凄腕のシステムエンジニアの方が急に体調を崩し、危うく命を落としかけたという話をSNSで知ったのです。幸い一命は取り留めましたが、原因はエコノミークラス症候群でした。

ほとんど動かずに仕事を続けた結果、脚の静脈に血栓ができ、それが肺に詰まる肺塞栓症を起こしたとのことでした。

……かなり衝撃を受けました。

「喫煙と同じぐらい体に悪い」というのは大げさだと思っていたのに、急に他人事とは思えなくなりました。

私も毎日長時間デスクに向かっています。
忙しいというより要領が悪いだけかもしれませんが、座っている時間が長いのは事実です。
その影響なのか、過去に前立腺炎になったこともありました。

そこで、そもそもなぜ座りすぎが問題なのかを改めて調べてみました。
調べてみると、健康だけでなく老化とも深く関係していることが分かりました。


座りすぎが、なぜ体に悪いのか

座りっぱなしには主に三つの問題があります。

① 血流が悪くなり、体の回復が遅れる

人間の体は、もともと長時間座り続けるようにはできていません。
本来は、立ったり歩いたりしながら使う前提でできています。

長時間座っていると、下半身の血流が滞りやすくなります。
歩いたり立ったりしているときに働くふくらはぎの筋ポンプが、座っている間はほとんど機能しないからです。

血液は酸素や栄養を届けるだけでなく、老廃物を回収する役割も担っています。

血流が悪くなると、修復や再生に必要なものが行き渡りにくくなります。

血流が悪い状態が続くことは、回復力を削っていくことでもあります。


② 姿勢が崩れやすく、体が固定される

座りっぱなしの問題は、動かないことだけではありません。
座ると姿勢そのものが崩れやすくなります。

体重の多くを椅子に預けられるため、ひじ掛けや机にもたれたり、片側に体重をかけたりと楽な姿勢に流れやすくなります。

デスクワークでは視線も下がるため、首が前に出て背中が丸まり、その状態が固定されがちです。

同じ姿勢が長時間続くことで、呼吸は浅くなり筋肉は固まり、血流もさらに悪くなりやすくなります。


③ 運動していても影響は残りやすい

短時間の運動だけでは、長時間の座位の影響を完全に打ち消すことは難しいとされています。

30分運動しても、それ以外の時間をほとんど座って過ごしていれば、体はあまりエネルギーを使わない状態のままになってしまい、代謝が悪くなります。

血流や代謝の低下、筋肉の不活動が続くことは、体の回復力が落ちやすくなるという意味でも、老化と無関係ではありません。
アンチエイジングという視点で見ると、大切なのは激しく鍛えることよりも体を止めないことなのかもしれません。


座ること自体が悪いわけではありません。
問題は長時間同じ姿勢で体を固定し続けてしまうことです。

だから私は、姿勢を気合いで正そうとするのではなく、姿勢を正しやすい環境を作ることを選びました。


スタンディングデスクという選択

スタンディングデスクの導入というと、大変なことのように感じる方もいるかもしれません。
でも実際に使ってみると、想像していたよりも自然に仕事に溶け込みました。

組み立ては一人でやったので2~3時間かかり、少し大変でした。
できれば2人以上で組み立てることをおすすめします。

私が使っているのは、こういうタイプのスタンディングデスクです。

電動昇降式デスク・EW8

実際に使って感じたこと

実際に使い始めて感じたのは、姿勢を意識する時間が増えたということです。
仕事の集中力も、以前より上がったように感じています。

おそらくもたれる場所がないため背筋が伸びやすくなるからだと思います。
姿勢が崩れにくくなると呼吸もしやすくなり、その結果集中しやすくなるのかもしれません。

そして、私は立つたびに踵上げ運動(カーフレイズ)を10回やるようにしています。
ふくらはぎを動かすことで血流が良くなる感覚があり、簡単にできるので続けやすい習慣になっています。

ただし、一つだけ注意点もありました。

使い始めたばかりの頃、右のくるぶしに少し痛みが出ました。
湿布を貼ればすぐ治りましたが、どうやら無意識に右足へ体重をかける癖があったようでした。その負担で軽い炎症が起きたのだと思います。

また、長時間立ちっぱなしにすると、どうしても足は疲れてきます。
疲れてくると姿勢が崩れやすくなり、机にもたれかかったりしてしまいます。

そこで私は、
「疲れる前に座る」ことを意識するようにしました。

例えば30分ごとに座る・立つを切り替えるくらいの感覚で使うと、
無理なく続けやすいと思います。


まとめ

姿勢を気合いで正そうとしても、長時間のデスクワークではなかなか続きません。

でも環境を変えると、体の状態は少しずつ変わっていきます。

スタンディングデスクは、そのきっかけの一つになりました。


前の記事とこの記事で「環境」の大切さについて書いてきましたが、いくら環境を整えても、疲れてくると姿勢は崩れてしまいます。

だからこそ、日頃から意識することも大切です。

その「意識を習慣にする」方法については、次の記事で書いています。
意識を、習慣にする。


※「Sitting is the new smoking」という表現は、アメリカの研究などで長時間の座位と健康リスクの関連が指摘されたことを背景に広まったものです。
実際に、座っている時間が長い人ほど死亡率が高くなるという大規模なコホート研究も報告されています。

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